オトナになるまで待たないで
夜、花火を買って海岸で遊んだ。


高校生が父親と花火で遊ぶなんて、

ちょっと恥ずかしいんだけど。


星のきれいな夜で、海の向こうは隙間なく闇が広がっていた。



「いい所だね」

と私は言った。

「うん」

お父さんは、新しい花火に火をつけた。

「退院してから、色んな人が来てくれてさ。いい人ばっかりだよ。自分たちだって大変なのにさ」

「そうだね」



煙を吸い込んだのか、お父さんは少し咳こんだ。


「大丈夫?」


私の問いかけに、お父さんは答えた。


「最近、ようやく自分に戻れたような気がする。

昔の…素直な自分に。

意地ばっかり張ってバカだったな。

素直が一番だよ。ここに居ると本当にそう思う。

意地、張っちゃダメだよ。

それでずいぶん遠回りしちゃったよ」
< 281 / 472 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop