オトナになるまで待たないで
お爺さんは、お茶を一口飲んで少し黙りこんだ。


「生物は、失いながら生きてゆくものなのです。

何かを得たと思ってもそれは借り物にすぎません。

自身の命、それ自体が借り物だからです。


けれど、愛情をかけたものだけ…。

愛情だけは残すことが出来ます。


その愛情は『ささい』で、充分なのです。

『ささい』の積み重ねでしかないのです。

『申し訳ない』

『花が美しい』

『子供が可愛い』

心底、感じ入る。

それも愛情でございます」
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