LOVE・ホテルに行こう。
満足した圭吾が後ろから抱き締める。
背中に圭吾の温かさが伝わってくる。


「美久。…俺、今、凄く幸せ。

このまま美久と一緒に居たいって、俺の事見てほしいって欲張りになってた。俺から言い出したのに美久を困らせてるのが辛かった。でも終わりにするって言う勇気が無くて。言ったら本当に終わりだから、美久と俺はそんな関係だったから。

あの日…初めて美久が俺の近くにきた日。俺、夢みたいで。朝、起きたら美久が居なくてワケわかんなくて焦った。時間が経つにつれて不安で電話しても連絡こないし。俺の事好きなのかなって思ってた僅かな期待も無くなった。冷静になるとあのメモと一万円札が何を意味するか何となく解ってきた。喫茶店で美久と話して、あぁやっぱりかって。勘違いして少しでも浮かれて…なんか、悔しかった。美久が俺の事、全然眼中に無くて近付くどころか避けてたのも。
美久に酷い事言って美久を傷付けたかった。だから勝手な提案して美久が困って泣き出して、そしたら全て忘れようってあの日の事も美久の事も。俺の知ってる美久はそんな人なんだろうなって思ってたから。
だけど美久は俺を睨んで俺の勝手な提案にのった。俺、不意討ちされて驚いた。
美久の隣に居て俺の知らなかった美久を知る度にドンドン好きになって、離したくないって欲張りになってく自分が嫌だった。美久と一緒に居ても心の隅には罪悪感が消えなくて…。これじゃいけないってずっと考えてた。だけど俺、言い出すのが怖くて、言ったら美久と終わりになるから。信平や綾子見て羨ましいなって思った。あれが当たり前の姿だもんな。好きな人が隣に居て恋人って周りから思われて。ようやく決心付いて美久に告白しようって。ダメだったらキッパリ諦めて、俺の勝手な提案から美久を解放しなくちゃって。…違うか、俺が逃げたかったのかも、苦しくなる事から。…だから勝手なのは俺。俺が全部悪い。

ホント、俺って馬鹿でずるくて単純でどうしょうもないダメ男。

…美久。こんな俺でも傍に居てくれる?」


ゆっくり話す圭吾の言葉は私の心にゆっくり入ってくる。


「…うん。…馬鹿でずるくて単純でどうしょうもないダメ男だけど私が傍に居てあげる。
ずっと圭吾を見ててあげる」


「俺が言う分にはいいけど美久にダメ男って言われると…傷付く。

…美久、俺を慰めてよ」


首筋に唇の感触。


「ちょっ、離れてっ。今日はもう無理っ。腕を離してっ」


抵抗しても無理な事は解ってる。
私を後ろからガッチリ捕まえてる腕が離れる事はない。


「大人しくしてて、優しくするから」


馬鹿でずるくて単純でどうしょうもないダメ男。


そんな事全然ない。
優しくて繊細で私の事を全力で包んでくれて。


好き。
大好き。
圭吾が大好き。


私も単純なのかな。
好きになると圭吾の全てが良く見える。


短所も長所?


「美久。…感じてる?」


「馬鹿に付ける薬、早く買わなきゃ。
もうー、どうにでもしてっ。圭吾の好きにしてっ」


さりげなく強引な圭吾に私も開き直る。
仰向けにされた私の前に圭吾の素肌が現れる。


「好きにしてって。美久、エロい。
俺、もう我慢出来ないっ。」


逃げられないんだったら挑むだけ。
覚悟してよね、圭吾。




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