LOVE・ホテルに行こう。
「美久、何か飲む?」


呑気に冷蔵庫を開けている圭吾。


「理由って何よっ」


「そう、カリカリしないで」


ゆっくりと私に近付いて抱き締める。


「離して。今、そう言う気分じゃない」


冷たい口調で圭吾に告げる。


「騙したのは悪かった、ごめん。
美久…俺達、ここで始まったの覚えてる?
1年前と…同じ部屋」


そんなイチイチ部屋なんか覚えてないわよっ。


「…」


「もう一度ここに来てあの日をやり直したかった。美久と始まった場所だけど…。思い出の上書きって言うか、いい思い出に変えたいなって。美久の誕生日の今日に。俺のワガママ。
…ごめん」


「だったら言ってよ、最初に」


「美久、ラブホテル行こうって?
改まって理由言って行くのってなんか恥ずかしいじゃん。

『美久、ラブホテル行こう』
『美久、ラブホテル行こう』」


声色を変えて二回言った後
プッと吹き出して笑い始めた圭吾。


私もつられて笑ってしまった。


「何やってんだろうな、俺達。笑える」


「俺達じゃなくて、圭吾だけだから」


「そうだな。笑えるな、俺。美久、出ようか?」


「ここまで来たからには圭吾のお望み通りいい思い出、作ろうじゃない。もう二度と来ないかもしれないし」


まずはシャンパンで乾杯しよう、とグラスを合わせた。


「美久、誕生日おめでとう」


「ありがとう」


「うん、旨いっ」


「水沢君と奈美ちゃんの結婚、驚いたね。付き合ってるのは知ってたけど」


「赤ちゃんが出来たって」


「えっ、嘘っ。本当?」


「水沢から聞いた。あいつ、聞いたその日に吉川さんの両親に挨拶に行ったんだって。勇気あるよな」


「…もし、私がそうだったとしたら圭吾はどうしてた?」


「美久が俺の子?凄い嬉しい。美久のお父さんに殴られようが蹴られようが挨拶行くに決まってんじゃん」


「まぁね。口ではなんとでも言えるからな~」


「信じてないの?俺の事」


シュンとした圭吾に


「私を騙すような人は信じられない」


追い撃ちをかける。


「だから…ごめんって」


フフフと笑って圭吾を見る。


「冗談だよ。圭吾の事は信じてる」


「美久~」


甘えた声を出して私を抱き締めた。


「美久、そろそろいい思い出作ろうか?」


「出たっ、エロ星人。
もう、解ったから一旦離れて。
汗かいちゃったからシャワーしてくる」


圭吾から離れてお風呂場に行く。
甘い香りのボディーシャンプーで体を洗う。


「美久~」


振り向くと素っ裸の圭吾が…。
前の前はタオルで隠してるけど。
明るいお風呂のライトが引き締まった圭吾の裸体を私に見せた。


「なっ、な、何?何?」


「一緒、入ろうと思って。洗ったげる、美久」


「ちょっ、ちょっとー、私、すぐ出るから外で待っててよ」


隠しながらも圭吾に手で出ていってとジェスチャーをする。


「いいじゃん。俺達、夫婦なんだから」


そう言ってタオルを取った。


私も


圭吾も


身に付けてるのは


薬指の結婚指輪だけ。


「ちょっ、触らないでよっ。
馬鹿っ、圭吾の大馬鹿ーーーーーーーーっ」










『LOVE・ホテルに行こう。』

おわり。

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