カメカミ幸福論
「き・・・嫌いではないけど、そういうのじゃないってゆーか、ってか、あんたに関係ないでしょうがっ!?大体あんたが小暮の後ろでドタバタ騒ぐから、小暮が何て言ったかちっとも覚えてないのよ!」
本来なら人生に一度か二度あるかないかくらいのちょっといい場面だったはずなのだ。
いくらヤツに恋愛感情のない私でも、胸にぐっとくるかもしれなかった告白シーン。それをどっかの出来損ないのコメディみたいにしたのはあんたじゃないか~っ!!
応援したいのか邪魔したいのか一向にハッキリしない神に怒髪天きて、私は全身で震えていた。ブルブルと。寒いんじゃないのよ、腹が立ってるの。
「それにそれに背中を押したりするのやめてくれる!?立派な酔っ払いみたいに思われたじゃないのよ!」
ダンがにやりと笑った。その、「神」という役職名(で、いいのかしら?)を大いに疑いたくなる人間くさい悪巧みしたような笑顔に、私は一瞬頭が冷えた。
・・・な・・・何よ。
ニヤニヤといやらしく笑ってもムカつくほどの美貌で、ダンが私に近づいてくる。私は同じ速度で後ろに下がりながら冷や汗が噴出すのを感じた。
「俺が」
ダンが歌うように口を開く。
「折角チャンスを作ってやったというのに。それも台無しにして、ムツミは一体何をしてるんだ?」
壁際に追い詰められて、私は裏返った声で懸命に叫ぶ。
「ちゃ、チャンス?!チャンスって何よ!?」