カメカミ幸福論

・自分を殺さずに済む相手


 お盆休み、最後の二日間は、実家への里帰りだった。

 とは行っても今年はすでに先月祖父の誕生日祝いで一度帰っている。ダンつきで。だから、私としては普段よりも「自分の世界から抜け出す面倒臭さ」は感じなかったし、それに今回は煩い親戚一同はいないのだ。

 だから、そんなに足取りは重くなかった。

 休みに入ってからダンと同居生活を何となくやっていて、キスまでされちゃうという驚きモモの木山椒の木があったけれど、それからのダンはあの色気はあっさりと消してしまっていたって普通に接していたから、私は何だか狐につままれたような気がしていたのだ。

 ・・・な~んだよ、おめえ、試しただけかよ。みたいに。面白くない、という感想も、頑張って書き消したけれども確かに心の中にはあった・・・かも。

 男と(といっても人間じゃないが)暮らし、男と(といっても人間じゃないんだけど)キスをした。それは考えれば考えるほど頭がこんがらがるような出来事なので、もう考えることをやめたかったのだ。

 それには現実的になるのが一番いい。

 だから、実家に帰るのも悪くないかもって思っていた。

 実家とは、ファンタジーなどは一切の関係がない、ものすご~く現実的な場所であるからだ。

「睦、お帰り」

 やはり親戚がいないからプレッシャーから解放されているらしい母親が、先月には見られなかった笑顔での出迎えをしてくれた。

「はいただいま」


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