カメカミ幸福論
困った。私はため息をつきたい気持ちを抑えて額に手をやる。あーあ・・・。
「・・・そんなことないわよ」
だって邪魔ではない。基本的には一人でいるのが楽だけど、美紀ちゃんにランチに誘われるのだって小暮が一緒するのだって、別になんてことないのだ。ただ、もう前みたいに「ただの」同期とは思えないから、困るってだけで。だって、あんたは私にあろうことか真剣な告白をして―――――――――――
お皿を綺麗にした小暮が、体をこっちに向けたのが視界の端にうつった。
「じゃ、また隣に来ていい?」
「どうぞ」
「本当にいい?」
「うん」
「ほんとーうに?」
「・・・何なのよ。駄目って言おうか?」
あははは、と小暮の笑い声。何がおかしいのだ一体!私はギロリと隣を睨む。突き刺さっているはずの私の険しい視線は一向に気にしていないようで、小暮は軽やかに言葉を続ける。
「カメ、調子いいのか?」
私は視線を外して深深とため息をついた。ああ、疲れる・・・。ざわざわと喧しい社員食堂を見回して、誰か助けてくれそうな人を探してみたけれど、小暮の上司とか他の同期とか丁度いい人間は誰も見当たらなかった。だから観念して会話に付き合うことにする。
「そうね。仕事は今ちょっと忙しいけど、体調は悪くないかな」
ふーん、小暮がそう呟くのが聞こえた。彼は水を飲み干してコップを空にすると、それをトレーの上においてから私を振り返る。