カメカミ幸福論

・亀山家にて



 ダンが私の前に下りてきた迷惑なあの夕方から2週間経っていた。

 その間、何とか私もダンも、相手に折り合いをつけてきたように思う。・・・というか、諦めの極致に達したというか、好意的に言えば慣れたのだろう。

 とにかく私はただひたすら職場と家の往復で、休日は家で掃除や家事をし、あとは昼間からビールを飲んでぼけ~っとしている。それに小姑のように(って、知らないけど。まあ世間一般でいう小姑さんみたく)小言を私に言うまくる神、ダン。

「お前には趣味はないのか?」

「素晴らしい天気だ。世界が美しいこの時間に外へ行かないなんて罪ではないだろうか~?」

「ムツミ、ほら、花を見に行こう。行こうってば~」

 みたいな外への誘い系から、

「ここ、まだ埃が取れていない。どうせやるならキチンとやったらどうだ?」

「たまには朝一で窓を開けて換気しろよー。朝の空気が素晴らしいんだぞ」

「新聞を読むときに寝転ぶのはどうにかならない?姿勢が悪くなる」

 などの説教系。どっちにしろ、かーなり迷惑だった。

 ・・・ああ、煩い。私は今日も背後であーだこーだと苦情を垂れる美形の神をスルーして、夏に入ったある日曜日、扇風機の風を浴びながらトールグラスに注いだビールをぐぐ~っと飲む。

 昼間っから飲むアルコールは最高。部屋着で、ダラダラ出来るこの身分に満足している。私はアタリメを口に突っ込みながら、ぼんやりと雑誌の記事を読む。

 恋愛占い。あなたの性格判断。これから取るべき資格に転職方法・・・。世間は変わらず、自己啓発に目覚めろとうるさい。


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