カメカミ幸福論


 ヤツは無駄にキラキラした光の粒子を振りまきながら、更に微笑みを大きくした。これが「神の微笑」か!・・・って、まんまじゃん。

「ムツミを観察対象とすべし、そう思って俺なりに頑張って距離を開けていたんだ。最初は礼儀正しくしていたし、セクハラだと侮辱されてからは手を差し伸べるのもやめて」

 礼儀正しくのところで私は噴出したし、手を差し伸べるのところで懸命に爆笑を飲み込んだと言っておこう。一体何なんだ、この勘違い野郎は?

 私のあからさまな反応にも気がつかないのか、とにかく美形であることは認める綺麗な顔に微笑みを浮かべたままでダンは続ける。

「だけど、それは本来の俺のやり方じゃないなって」

「はあ」

「だからもう観察も、通例通りじゃなくて好き勝手やろうって」

「・・・はあ?」

「俺は気が向いたらあんたに話しかけるし、ムツミの都合など考えない。俺の好きなように、あんたを観察することにしたんだ」

 ――――――――クラクラ。

 神様!・・・いや、こんなひよっこのバカ者でなく、本物の全知全能の神様!成り損ないがこんなところで油うってますよ~!お迎えにきてください~!

 私は眩暈が酷くなった為に壁にもたれ、心の中でそう絶叫した。

 つまり。

 つまり?

 ダンは今までの猫かぶり(つってもそれもいい加減だったわけだけど)を止めて、好き勝手やるって言ってるのね?それでいいのね?


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