一筋のヒカリ。
「美沙、今日の宿題やった?」

大丈夫、と答えた矢先にもう別の話題が突きつけられる。
こういうのも普通なのかもしれないが、少し冷めたところがある美沙は疲労してしまう。
しかし、そんな事を億尾にも出さずに彼女は明るく振舞う。
そうする事で、一時でも楽しく居られるから。

「あー・・・やってないかも。何だっけ?」

「そんなのあったっけ?」

「発展だけだと思うけど」

一度話し出せば、ずっと他愛も無いお喋りは続く。
それが、とても大切な時間だということに、多くの人間は気付いていない。


「その前に何の教科よ?」

「多分英語」

「えーそんなの出たの?難しそー」

「由香基礎だっけ?」

「うん・・・」

この場合・・・というかこの学校では、英語は基礎コースと発展コースに分けられている。
学校側にも色々と建前は在るらしいが、そんな事は生徒には知ったことではない。
生徒内では、
基礎コースは馬鹿、
発展コースは頭がいい人、
という共通認識が持たれている。

「発展マジムズいよ・・・うち付いて行けないし」

佳織はいわゆる秀才・・・とまでは行かないが、まあ頭が良い方だ。けして付いて行けないレベルではない。
それなのに、いつも謙遜してそんな事を言う。
もちろん、毎回突っ込みは入る。
大体、その役目は美沙である。

「何言ってんの・・・っ」

しかし今回、その役目を担う美沙は色々と疲れているために突っ込みにも力が入らない。

「もー!美沙突っ込み弱すぎ!」

由香は明るく勝手なことを言う。

「いや、どうでもいいから」

早々と次の教科の準備を終え、遥は冷めた口調で話す。

「突っ込まなくていいってばー」

笑いながら言葉を紡ぐ佳織。

それを受け、楽しそうに笑う美沙。


嘘ではない。
何物にも変えがたい、それは友情―――というもの、だろう。

そう、三人の少女は思い込んでいた。

ただ、一人の少女だけが、
この偽りの薄っぺらな友情に、
友、と思われている者を騙し続けることに、
罪悪感を抱いていた。

それは小さいけれど、それでも、少女の中に、消えない傷となって残り続ける。
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