【B】姫と王子の秘密な関係


げっ、SVの小川耕司【おがわ こうじ】。

なんでこんな時間に来るのよ。






この小川は、通称……営業さん。


本部社員の中で店舗オーナーの相談役・指導役として
派遣されてくる存在が、スーパーバイザー。

略してSVなんだけど……
まぁ、スタッフと相性が悪いのなんのって。



仕事をしながら、
私と和羽はお互いにアイコンタクトを送りあって、
SVの動きを把握する。




とりあえずカウンターにずっといたらマズイ。


責任者番号を解除して、
ひそひそ声で役割分担。


和羽に商品のパッケージを正面向くように、
確実に陳列を徹底してもらえるように任せると、
私は商品を取りにいくように事務所の中へと入っていく。
 


「失礼します」



お辞儀をして、お箸やレジ袋の補充や、レジロール、チケットロールを手にとりながら
すかざす、小川SVの様子を探る。


ストコン【ストア-コンピューター】にうつるのは、
新商品の、今日1日の売り上げ動向。


それと同時に、オーナーデスクに視線を向けると
次回の本部推奨商品の、強制発注数の指示書を確認する。


SVたちが営業さんって呼ばれちゃうのは、
この強制的に発注数が、店舗負担になるからで。

その店舗店舗で、売れる商品、売れない商品があるのは確かなはずなんだけど
この強制発注は、SVの成績を上げるために押し付けられるもので。



今回のターゲットになってる部門に、
私と和羽が関係している、ドリンク部門もあったから
慌てて飛び出すように、カウンターへと戻った。


私がカウンターに戻ったと同時に、その仕事を手伝う様に和羽が合流。
二人で消耗品を補充しながら、
コソコソと今見た、強制発注の内容を耳打ち。



「マジ?」

「そう、マジだった。
 炭酸水なんて、5種類もどこに置くのよ」

「そうよ、売り場には限りがあるわ。
 売れる商品をカットして、売れずに廃棄出た商品を発注させようとするって
 まったく、あの営業何考えてんのよ」



和羽が小さく怒りを見せる。



「私、お父さんに相談してみるよ。
 あぁ、あの野郎。

 腹立つ。
 
 一回くらい、自分で発注指示して、
 売れなかった商品の買取りしやがれって言うのよ」

「音羽、私資料作っておくよ。

 確か、前回のその対象商品の入荷日、廃棄日、廃棄数。
 売り上げの癖みたいなものを保存してるはずだから」

「了解。
 んじゃ、今回こそは行けるところまで抵抗しましょ」 




そんな打ち合わせをしている頃には、
事務所を出て、店舗内のチェック。

今日は抜かりなしよ。

Sランク。
95点以上を死守するのよ、私たち。


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