【B】姫と王子の秘密な関係



「これって、倉元由香里(くらもとゆかり)が昔受賞した
 Trancemigrasion(トランスミグレーション)?」

「そうそう。

 大昔にも、TVドラマで放送されてたみたいなんだけど
 今度は、アニメーションで復刻版とゲーム展開。

 前回の新選組からはがらりと変わるけど、
 それもありじゃない?」

「まぁ、神話風の衣装なんて、
 何処がどうなってるかいまいちわかんないんだけど」

「あっ、でも見てたら何とかなるって」


和羽は私が見せた携帯画面で、
必死に作り方を考えてるみたいだった。



バイト時間までの三時間はあっという間で、
お店で新作衣装の布を探して、軽く休憩を兼ねてお茶をしたら
ころあいの時間になってしまった。




「「おはようございます」」



いつもの様に店舗に挨拶をして入店する。


そこには、SVの訪れを私に告げる
もう一人の高崎さんと言う存在。



「おはようございます。
 お疲れ様です」


高崎さんの前を通り抜ける時に挨拶をしてお辞儀する。



「お疲れ様です。
 今日も宜しくお願いします」


そう言って、
柔らかに微笑んで切り返してくる存在。



小川だと無視で終わるから、
正直、ちょっとまだ抵抗力が……。



和羽は更衣室に続く関係者ドアを開いて、着替えに行く。
私は自分の部屋で着替えられるように、
居住区へと繋がってる階段をのぼって、制服に着替えを済ませると
今日のシフトIN。


SVが来てるのを情報として知り得た私と和羽は
事務所のドアをノックして、ゆっくりと入る。



この雰囲気嫌なんだよね……。


そんなことを思いながら、ストコン前に居る小川に邪魔だからどけよっ!!なんて思いながらも
その心を押し殺して出勤作業。



ストコン前には、
小川が陣取って、その隣には、ノーパソを開いた高崎さん。

向かい側には、オーナーである父と店長である母が
ノートにメモを取りながら、話し合ってる。




チラリと覗き見た書類から視界に入ってきたのは、
『複数店経営希望』の文字。



何?




お父さん……もしかして、
二号店もやってみたいとか思ってる?




今すぐにでも切り出したい言葉を
必死に呑み込んで、私は一礼して事務所を後にした。
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