スタートライン~私と先生と彼~【完結】

今が5月でよかった。

真夏なら絶対に、熱中症になってるだろうし、真冬なら寒くて震えてるだろう・・・・・。


「どうしたの?誰か待ってるの?私たちと一緒にカラオケ行かない?」


逆ナン??

ごめんね。君たちには興味はないよ。

「すみません。友達を待ってるから」

とりあえず丁寧に断っておいた。

さらに30分。

ようやく姿を見せてくれた愛しいの人は、一人で校舎から出てきた。

感動の再会の気分がよくわかるよ・・・。


「どうしたの?」


大きな瞳をさらに大きくして、さっちゃんは駆け寄って来てくれた。

俺は右手を軽く挙げた。余裕ぶって。


「さっちゃん、遅かったね」


しまった・・・思わず正直に言ってしまった。

全く余裕がないのが一瞬にして露呈されてしまった。


「今日は個人面談やったから」

「そっかぁ、もう帰ったのかと思ったよ」

会えてよかったよ。


「・・・また理香が何か言った??」


探りながら聞いてくるさっちゃんに、俺はとぼけるように答えた。


「手越さん?別に何も言われてないよ」


手越さんが俺にさっちゃんの誕生日を教えたのではなく、俺が聞いたんだから・・・。


「そ、そっかぁ」


納得のいかない表情のさっちゃんを横目に、俺は本題に入ろうとした。


「あのさ、これ」

鞄の中からプレゼントを取り出すとさっちゃんの前に差し出した。


「ん?何?」


さっちゃんは、俺が取り出したものを見て、不思議な顔をしていた。


「さっちゃん、今日誕生日やろ?」


俺は戸惑うさっちゃんの顔を見ながら言うと、彼女は俺の顔を見上げて頷いた。


「う、うん」


やっぱり不審がってる?ちゃんと言わないと・・・。


「手越さんに聞いた・・・・・・誕生日」


そう言うと、さっちゃんは安心したように、笑顔になった。


「ありがとう。開けていい?」


俺は、恥ずかしくてさっちゃんの顔を見れずに、顔を逸らした。


「あのさ、女の子へのプレゼントなんて買ったことないから、何がいいのかわからなくて・・・俺ら、受験生やからいいかな?って・・・」


なんだか照れ臭くて口数が増えていた。


「ふふっ」


俺は、突然笑みを零したさっちゃんの顔を覗き込んだ。


「どうした?」


「隆が、これを選んでるのを想像したら、おかしくって」

「ひどいな〜。笑うなよ!ってか、ホンマに恥ずかしかった・・・」

「ごめんね」

「いいよ〜。俺こそ、さっちゃんの欲しいものわからんかったから・・・」

「ううん。ありがとう。嬉しいよ」


喜んでくれた??

これっていい雰囲気じゃないか??


そうこうしていたら、駅に着いてしまった。また誰かを捜すのかと思いきや、隣のさっちゃんはそんなそぶりを見せることはなかった。


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