SINGLE
離婚
荷物をまとめて家を出た。

晴久(はるひさ)とはいつものように会話した。


「板金屋、行ってくる。」

「行ってらっしゃい」


晴久はきっと、この後に起こる事態に気付きもしなかっただろう。

博愛(ひろあ)は限界だった。

晴久にも、姑に当たる香奈(かな)にも。


「美嘉(よしか)、お家にさよなら言いなさい。もう二度と、お父さんには会えないよ」


生後4ヶ月の愛娘、美嘉は何の事やらと言った顔で博愛を見つめていた。

荷物を車に積み込む。

のどかな春先の風は、晴久と博愛に別れを運んできた。

付き合っていた頃を含むと、ちょうど3年。

晴久と博愛は3年連れ添った。

別れたくても別れられず、ずるずると一緒にいた。

人一倍喧嘩も多く、本気で別れを考えたなら別れるタイミングなど山ほどあった。

でも、どこかでお互い引き合っていた。
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