SINGLE
博愛が風呂上がりに髪の毛を乾かしている間に、美嘉は晴久を嫌がって泣ききっていた。

その泣き声が、博愛には聞こえていなかったのだ。

香奈が美嘉をあやした。

それでも美嘉は泣いた。


「私に触るな」


そう言わんばかりに。

何も知らない博愛を、晴久と香奈は責め立てた。

仕事で疲れているのにこんなに泣かすなと。

美嘉はおかしいと。

そして、博愛の育児は間違っていると。

限界だった。

美嘉が二人を嫌う理由を、当事者は何も分かっていない。

晴久が今日まで博愛に向けて働いた暴力や暴言、不貞を。

香奈が博愛に向けてしてきた言動を。

最終的に美嘉にまで向いた矛先…

それだけは無いと信じていたのに。
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