プラトニック・オーダー
 ホテルから徒歩10分くらいの距離に、そのカフェはあった。
ログハウス調の小ぢんまりとした外装で、中に入るとカントリー系の家具で統一された店内はアットホームな印象を受けた。
その柔らかな内装とは対照的に、店主はヒゲ面の強面のおじ様だったわけだけど。

「いらっしゃい!お、勤くん」

店主は気さくな様子で保坂くんに話しかけてきた。
私も小さく会釈をする。

「あれー?奥さんは?」

「ばっか、暇な時間だもんお昼ごはん食べてるよ」

「ああ、なるほど」

保坂くんは勝手に窓際の席に腰掛けると、私を手招きした。

「ハンバーグおいしいよ」

「じゃあそれ食べる」

「おじさん、ハンバーグプレートふたつー」

「あいよ」

短いやり取りの後、店主は奥へ引っ込んでいった。
入れ違いに女の人がお水を二つもって出てきた。

「いらっしゃーい。あら、そっちの子は初めてね?彼女?」

「ご飯食べてたのにごめんね、奥さん。こっちは俺の婚約者です」

「まぁ!勤くん結婚するの?全然そんな話してなかったじゃないー」

「聞かれなかったからねー」

「確かにねー」

相当の常連さんなのか、保坂くんはにこにこと会話している。
私は圧倒されながら、水を飲んで二人を眺めていた。

 暫くして、ハンバーグプレートが運ばれてきた。

ワンプレートにバターライスとポテトサラダ、自家製デミグラスソースのかかったハンバーグ、ナポリタン……と、相当のボリュームだった。

「これはサービスね」

そう言って奥さんが出してくれたのは、ティラミスだった。

「ありがとうございます」

「あれ、俺の分は?」

「ないわよ」

保坂くんが残念そうにしていたので、後であげようとおもう。
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