メトロノーム
メトロノーム

涙の成分はなんだろう。

どうしてこんなに涙が出るの。



寝息が向こうできこえる。

背中はこちらを向いていて、すぐふれる距離。

筋肉の隆起する日焼けしたその背中に、私はそっと、耳を当ててみる。


どく。どく。どく。


心音がきこえる。安心する。

私は裸の胸に手を当てて、自分の心臓を確かめる。


どく。どく。どく。


きこえる。大丈夫だ。

よかった。同じだ。


メトロノームのように、どくどくと同じテンポを刻むハート。

いつしか私の心臓は、右耳から流れてくる貴方の心臓に連動する。同じリズムで鼓動し始める。

まるで、ひとつになったかのように。

私はそのことに安心して、やっと眠りに落ちる。



例え、それが錯覚だとしても。
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