彼氏いません。
「そうか。じゃ、お前は悪くないな」
「ですよね」
「ええっ」
西牟田先輩は目を大きく見開く。

「腹空かせてたんだろ?なら仕方ない。ほらほら、そろそろ予鈴なるぞ。全員教室に戻れー」

高橋先生が手を叩きながら言うと、残念な顔をしながら女の子たちは戻って行った。
西牟田先輩は「くっ…また来るからね桜さん!」なんてセリフを吐きながら階段の方へと向かっていく。

そんな騒動がありながらもしっかりとお弁当を食べ終えていた私はお弁当箱を片付けた。

高橋先生の背中は気づけば廊下の端だ。
「あー高橋先生かっこいい…ずっと眺めてたい…」
「彼氏に言いつけますよ雪さん」
「彼氏は彼氏!高橋先生は高橋先生!はーいいなぁ、桜は高橋先生と同じ苗字で…」
「高橋なんて珍しくもないじゃない。学年だけで三人はいるよ?」
「それでもあの高橋先生と同じって思えば特別になるでしょ!」

特別…ねぇ。
まあ私にとって『高橋』は二個目の苗字。特別といえば特別かもしれない。

再び廊下の端に目をやれば、高橋先生の姿はもう無かった。
「ネクタイ…曲がってなくてよかった」
「ん?何か言った?」
「…ちょっと今日慌ててたから、結び方雑だったかもなって思ってたの」
「?ふうん…」

高橋先生。つまりは、私の旦那さん。
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