たゆたえども沈まず
久喜の名前を出すと、ぴくと目の下が痙攣したのに気付いた。
「先輩、艶野と最近会いましたか?」
「……どうしてそんなこと言わないといけないのよ」
「この前、久喜が友達と飲んでいたらお金盗られたらしいんですよ」
「それで? 犯人探しってわけ、あんたが」
もうすぐ中間試験だな、と関係ないことを思った。試験が終わったら体育祭で、三年生の存在はどんどん薄れていく。
部長や江戸先輩は教室にいなかった。私は初めてここで、心細さを感じてしまった。
その動揺から、先輩がお金を盗ったことを察した。