たゆたえども沈まず
エンとシカク。


梅雨が好きだと思ったのは、雨が降るからではなくて紫陽花が咲くから。


『勘当された』


ひさしぶりにかかってきた電話番号が喋ったのは、梅雨にはお似合いの重たい話題。

私は明日の用意をしていた手を止めた。


「いつ?」

『さっき』

「今どこに居るの?」

『クラブで会った女の部屋』


返答の軽さに溜息を吐いてしまいそうだった。いつだって、久喜は安易な気がする。

女の部屋で、女に電話をかける男が居て良いものなのか。それとも女が女と認識されていないのか、私が女と認識されていないのか。



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