おやすみを言う前に

「おかえりー。」


四限の授業を終えて図書館でレポートに必要な文献を借りて帰宅したら、すでに拓馬が家にいた。

玩具メーカーで営業マンをしている彼は、仕事の有無によって帰宅時間にかなりの差が出る。本日は仕事が早く終わったらしい。まだ五時半だ。


「ただいまー。わ、すごーい。拓馬が料理してる!」

「今日は麻衣子の好きなロールキャベツやで。」

「うそー。ありがとー!」


キッチンからはいい匂いが漂っている。

バイトがある日以外は夕食作りは私の担当だが、こうして時々作ってくれることがある。よく出来た彼氏だと思う、私にはもったいないくらい。


「手ぇ洗ってきいや。」

「はーい。」


父親どころか母親みたいな拓馬の言葉に従って手洗いうがいを済ませ、部屋着に着替えて再びキッチンへ戻る。
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