おやすみを言う前に

「遠慮せんでええから、乗り。」

「私重いし、自分で歩きます、大丈夫です。」

「どう見ても大丈夫やないやん。早よせんと力づくでお姫様だっこすんで。」


少々強引に促すと、やっと麻衣子は肩に腕を掛けてきた。気が変わらないうちに彼女の鞄を持って立ち上がる。見た目で痩せているのはわかっていたけれど、予想よりも軽かった。


「全然重ないやん。」

「でも、迷惑かけちゃって。」


弱々しい声。本当はずっと具合悪かったのに無理していたんだろうか、俺が誘ったりしたから。気付いてやれなかった自分が情けない。

ベンチに寝かせて、せめてもと頭の部分にハンカチを敷いた。営業だからと一応持っていたハンカチがこんなところで役に立つとは。


「ずっと体調悪かったん?無理させてごめん。水か何か買ってこようか?」

「……違うんです。」


頭の側にしゃがんで話しかけると、麻衣子が両手で顔を覆って泣き出した。
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