おやすみを言う前に

初めて会ったときのことはよく覚えている。


「おう、みんな久しぶりやなあ。」


関西の某県で生まれ育ち、大学進学のため上京してそのまま東京で就職をし、就職三年目で大阪に一年間だけ転勤になった。というはずが、諸々の事情で転勤が伸びた、そんな社会人四年目の夏。

東京に出張する日にたまたまサークルの飲み会があり、OBやOGも参加するというので俺も参加した。

忙しくてなかなか大阪から出られず、東京に来るのは転勤になってから初めてだった。


「拓馬ー!おまえいつまで大阪にいんの?一年だけって言ってなかったっけ?」

「いろいろあって延びてん。せやけど、もう戻ってくんで。」


チェーンの居酒屋の大部屋に二十人ちょい。ざっと見渡すと知っている顔が四割、知らない顔が六割といったところだった。

もう皆そこそこお酒が進んでいるようで、顔が火照っている奴が大半だ。
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