小児病棟
正哉は病院から養護学校へと繋がっている廊下を歩きながら、さっきの映画のシーンを記憶の中で反芻していた。

「正哉、さっきの、脳が出血するやつ、なんか怖かったな」
 
悟がぼそっとつぶやいた。

正哉は、前を向いたまま言った。

「でもさあ、人間って、勝手だよね。マウスを殺して殺して、そんで自分たちが助かる薬を作ってるんだから……」

「まあな。でも、そのおかげで俺たちも助かってんじゃん。俺らが直れば、かあちゃん達だって喜ぶんだし」
 
正哉はなるほどと思った。悟の言う事に珍しく心から納得した。

「そっか、そうだね」
 
二人は長い廊下を歩いていく。

窓から差し込むオレンジ色の西日が、二人の影を一足早く校舎へといざなっていた。
< 224 / 241 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop