二次創作ドラゴンクエスト~深海の楽園~

「そんな…心配なさらないでください。あれは俺のせいであって、村長のせいではないんですから……。」

四年前のある日。あれは空模様も怪しく雲の中で稲光が聞こえていた日であった。母であるミレナは悪天候にも関わらず、熱を出したレドのために村の北にあるローム山に薬草を取りに行った。父のザードは漁に行っており、その時村にはいなかったのだ。村に戻ったザードは事情を聞くとすぐさまローム山に向かったが帰ってこず、天候が回復してから村の若い者たちが探しに山へ向かった。そこで捜索隊が見つけたのは、剣のようなもので胸を貫かれた二人の亡骸であった。ザードの右手には魔物のと思われる紫の翼の一部が握られており、死ぬ間際に魔物と格闘した際に引きちぎったものであるらしかった。

「あれはお主のせいではない、魔物の仕業じゃ。あの紫の翼…明らかに人間のものではい。しかしこの大陸にはあのような翼を持つ魔物は見たこともないし、聞いたこともないんじゃ。」

「しかも魔物は剣のような武器を使っている…。父さんは武器も持たずに山に駆け込んだから、圧倒的に不利だったはずだ。きっと驚いたに違いない…武器を使う魔物なんて、始めて見ただろうから…。」

「うむ…。じゃが自分を責めてはいかん、常に前向きに物事を考えなければ。」

レドは頷いて村長の険しい顔を見ていた。ちょうどその時、外では巻き貝の低く重い音が発せられた。祭りの準備が整い、祭りの始まりを知らせる合図である。

「祭りが始まったようじゃな。レドよ、今日は楽しみなさい。余計なことは考えずにな?」

「分かりました。村長、ありがとうございます。」

そう言ってレドは村長の部屋を後にした。部屋を出ると、グレイが既に玄関前で待っているのが見えた。

「待たせたみたいだな。」

「レド…お前村長に媚を売ろうとしてたんじゃないだろうな~?」

「何言ってんだよ。さぁ、行こうぜ♪」

レドは明るく振る舞い、グレイの腕を掴んで外へ出た。目の前の大きな切り株の上には様々な海鮮料理がところ狭しと並べられ、一年に一度の成人式を祝う祭りの夜が始まった。
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