フシギな片想い


葛藤を続けるも、日々はただ過ぎるだけで、とうとう夏期講習の最終日になってしまった。


私は最後に勇気を振り絞って、ほぼ初めて挑戦した手作りクッキーに手紙を添えて先生に渡した。


告白なんてとんでもない。


「玲央先生のおかげで算数が好きになりました。ありがとうございました。お礼のクッキーです。食べて下さい」と当り障りのないことを手紙には書いた。


優しい玲央先生は心良く受け取ってくれた。


もちろん、私以外にもそういう女の子はいっぱいいた。


最後に2ショットで写メを撮って貰い、私はその塾を卒業した。


その写メを見る度に胸がキュンとなり、口では説明できないような切なさが込み上げてくるので、その塾にまた入ろうかなって思ったけれど、その塾に残った友達の話だと、玲央先生も夏期講習が終わると、塾を辞めたらしかった。


どうやら彼は短期のアルバイト塾講師だったらしい。


彼との繋がりが全くなくなってしまい、がっくりと肩を落としたのを覚えている。




やがて、月日は経ち、その友達は見事、私立中学に合格し、進路は離れ離れになってしまった。


彼女が塾で一目ぼれしたAクラスの●●くんとどうなったかは解らなかった。


中学2年生の時に、風の噂で玲央先生と出会ったあの塾は潰れてしまったのだを聞いた。


けれど私にとってはいつまでたっても玲央先生が1番で、それを超えるような男の子は現れなかった。



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