恋の神様はどこにいる?
どれくらいの時間、ジッと立っていたんだろう。
時々通り過ぎる人が不審そうな目で見ていくのに気づいたからか、時間が私の気持ちを少し穏やかなものにしてくれてからか。
自分を取り戻すと、マンションに向かって歩き出す。
別に五鈴さんが、志貴の好きな人だと決まったわけじゃない。幼なじみ的な関係ならば、仲がいいのだって頷ける。
だけど……
五鈴さんが現れてすぐに離されてしまった手とほんの少しの距離が、私の心に僅かな不信感を残した。
私と手を繋いでいるところを、五鈴さんには見られたくなかった? 私の近くにいて、何かを疑われるのが嫌だった?
そんな心配することないのに。
だって私たちはまだ、恋人でもなんでもないんだから……。
「やっぱり志貴って、馬鹿だよね」
無理に笑ってみせると、目に滲んでいた涙をそっと拭った。
とにかく今は志貴と五鈴さんのことを詮索するより、巫女としての仕事を覚えるほうが先決。
幸いなことに、五鈴さんは毎日この神社にいるわけじゃないらしい。ふたりが一緒にいるところを見なければ、それに気をとらわれず巫女修行に没頭できるというものだ。
まあ志貴の下で働くことになりそうだから、一筋縄では行かないような気もするけれど。
それでも志貴のそばに要られることを嬉しく思うと、さっきまでより足取りが軽くなっていた。