恋の神様はどこにいる?

「なんで私が、志貴の肩なんか揉まなきゃいけないの?」

『俺の肩なんかって、誰の肩なら揉むってんだよ?』

「う~ん、例えば千里さんとか?」

『おい!! なんでそこで兄貴が出てくんだよ。おまえまさか、アイツのことが好きになったとか言うんじゃないだろうな?』

「さあ、どうでしょう?」

『おまえなぁ~』

ホントならここで、『そんなことあるわけないじゃない。私が好きなのは志貴だけだよ』とか言えちゃえば気持ちもスッキリするんだろうけれど。

元々そんなことを言う勇気がなかったのに、五鈴さんの出現で今まで以上に言い難くなって。こんな志貴の気持ちを試すような、冗談交じりの受け答えしかできなくなってしまった。

「ねえ志貴。何か用事があって電話してきたんでしょ?」

『ああ、そうだった。明日だけど、巫女舞を見せてやるから昼一時に社務所に来い』

「巫女舞を?」

『まだすぐってわけじゃないけど、いずれ小町にも舞ってもらわないといけないからな』

「うん、わかった。でもそれって……」

誰が舞って見せてくれるの? と聞こうとして止めた。

だってきっと、それは五鈴さんで。志貴の口から、彼女の名前は聞きたくない。

別に名前を呼ぶくらい、気にすることじゃないって言われそうだけど。今の私はそれさえも嫌って思うくらい、心が狭い女になっていた。



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