恋の神様はどこにいる?
しかもこの人はこんな格好をしてるくらいだから、ここの神主さんでしょ? 忙しいんじゃないの? こんなところで油を売ってていいの?
でもまあこんなカッコイイ人に抱きしめられるのは、悪い気分じゃないけれど。
しばらくこのままでもいいかな……なんて思っていたのに、目の前の天然さんの後ろからやっぱり同じ声が聞こえてきた。
「おい兄貴、そこで何やって……って千里(せんり)、なにソイツ抱きしめてんの!! さっさと離せよ」
わわっ出た、詐欺男!! タイミング悪し!!
でも今、兄貴? って言わなかった?
「ああ志貴。なんでそんなこと、志貴に言われないといけないんだい。この子は僕が最初に見つけたんだよ」
「見つけたってなぁ。コイツは俺との約束でここにいたの。だからコイツは俺んなの。わかったなら、早く離せよ」
「へぇー。この子は志貴の何?」
「俺の? そ、そうだなぁ……玩具(おもちゃ)だ」
は? 玩具? 何じゃそりゃ? 私はいつから、この男の玩具になったんだ!?
まったく意味がわかんない。
「へえーそうなんだ。玩具ねぇ……」
そう言いながら天然さんは私の身体を離すと、スッと顔を近づける。
「君、名前は?」
「小町です。真野小町」
「小町ちゃんか。名前まで可愛いね。僕の名前は、野々宮千里。そこにいる志貴の兄です。よろしくね、小町ちゃん」
「は、はい。よろしくお願いします」
……ってなんで私、よろしくなんて言って握手してるわけ? 何がよろしくだって言うのよ。ホント兄弟揃って、よくわからない人たちだ。