恋の神様はどこにいる?

ひとり暮らしに憧れて家族と離れて暮らしてみたものの、人間ときにはひとりでいることが寂しくなるもので。
人のぬくもりが、どうしても恋しくなってしまう。

それを求めるかのようにゆっくりと手を伸ばせば、ほんのり熱を放つ何かに触れ……。

熱を持つ何かに触れる?

確か私は1DKのアパートにひとり暮らしをしていて、彼氏とは別れたばかり。隣に誰かが寝ているはずないのに。

このぬくもりに感触は何?

それが何なのか確かめるように、撫でたり、擦ったり、摘んだり。

ちょっと気持ちいいかも……。

「なあ小町。おまえ朝っぱらから、人の顔に何すんだよ」

「わあぁっ!!」

聞き慣れた声に慌てて身体を起こすと、声がした方に顔を向けた。

「な、な、なんでここに志貴がいるの!?」

「ふわぁ~よく寝た。って、あれ? なんで俺、ここで寝てんだろなぁ」

だからそれを聞いてるんでしょ!! 志貴は確か、隣の部屋のソファで寝ていたはず。なのになんで私の隣で寝て
るのよ。

志貴はまだ寝ぼけているのか、頭をボリボリと掻きながら大きなあくびを繰り返すと、その手を私に向けて伸ばし始めた。

「なあ、もう少し寝かせて」

志貴のかったるそうな言葉が耳に届いた時にはもう、私の身体は志貴の腕の中にいて。身動きひとつできないくらい、力強く抱きしめられてしまっていた。




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