恋の神様はどこにいる?

「ごめん、驚かせちゃったね。でも小町ちゃん、さっきからおかしな動きしてたから気になっちゃって」

「さっきからって。千里さん、いつから見てたんですか?」

「そうだなあ、階段を上がってきた時から?」

って、最初からバレバレじゃない!! 私の苦労が水の泡のように、一瞬で消えていった。

身体中に張り詰めていた緊張感が一気に消え、ガクンと項垂れる。

「ごめんごめん、そんな気を落とさないで。で、今日はどうしたの? この時間なら、仕事中じゃない?」

腕時計を見ると、不思議そうに私の顔を覗きこんだ。

私が家を出たのが十時。だから今は十時半ごろだと思うけれど。確かにこんな時間に私がここにいたら、不思議そうな顔をされても仕方がない。

「訳あって、仕事辞めることになって」

「そうなんだ。それで、志貴に会いに来たってわけ?」

そうハッキリ言われてしまうと、それを認めたくない自分が顔を出してしまう。でも小さく頷くと、千里さんは私の腕を掴み身体を持ち上げた。

「じゃあこんなところにしゃがんでないで。僕が志貴がいるところまで連れて行ってあげる」

「え、でも。志貴、仕事中ですよね?」

「まあそうだけど。小町ちゃんに、いいものを見せてあげるよ」

いいもの? なんだろう、それ?

わけのわからないまま愉快そうに歩く千里さんに腕を引かれたどり着いたのは、華咲神社の本殿。中の様子が見えるところまで連れて行かれると、そこでは数人の神主と正装をしている人たちが大勢座っていて、神事が始まっていた。



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