☆You☆

私の住むアパート



弟が結婚して
実家に同居することになり

私は それを機に
実家を出ると 両親に伝えた


アパートを探しにいく週末の朝

母が そっと 私に アパートの鍵をくれた


ずっと使ってないアパートの部屋が
あるからと


そのアパートも 部屋も私は
初めて見る場所なのに

なぜか とても 懐かしくて



その部屋の中は とても殺風景で
生活感がなくて

独り暮らしには 大きすぎる
ダブルベッドがひとつ


ベッドの枕元には
音楽プレイヤーが置かれていて

中にはCDが入ったまま



私は このアパートの外から
見える景色が とても好きで


窓の外には


地元の夏の花火がよく見えて


でも私は

最初の大きな赤い花火を見て


その後は もう見ない


なぜだか わからないけど

花火に背中を向けてしまう


眠れない夜は

プレイヤーに入ったままだった
CDを聴くと とても
心が落ち着いて

窓を開けて空を見上げたくなる



私は 夜空の満天の星が
消える朝まで

肘枕をして 窓から見える空の
星をずっとずっと眺めている


部屋の壁に飾られた
時計から耳元に聞こえる

小さくて 穏やかな
優しいカチ カチ カチ

その時計の針の音を聞く度に
涙がこぼれる


その自分の癖が いつからなのか
分からないけれど


もうそれが
当たり前のような毎日で


しばらく休んでいた会社の
溜めた仕事を処理する日々に
追われる毎日


そして
こんな年齢になってしまった


自分は 潔癖性なのか

それとも男性不信なのか



家族以外の男の人に 少しでも
触れられるだけで

私の体は 自然に拒否する


恋もしていない

していない と言うより
男の人に 恋心を抱けない


ただ ひとつだけ

私の記憶のなかの

遠い遠い私の心のどこかで


あの日

私の手を握る
その大きな手と

尚 愛してる

その声が 恋しくて

その あたたかい ぬくもりで

ずっと

今日まで 守られている

そんな気がした

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