☆You☆

少しの沈黙の後

寛貴先輩は 苦笑い しながら



「そうか なら諦める 突然ごめんね」


そう言って 私の横をゆっくり
通りすぎていった


私は 自分の左手で 握りしめていた
右の小指を そっと 静かに離した


教室に 戻ろうとしたとき

何となく 悠太のいる教室の方に
目をやると



私の目線のずっと先に 悠太は 立っていた


離れた廊下のふたりの沈黙

私は その悠太の目線を振り払うように
教室に入ろうとした


背中の向こうから
廊下を駆け抜ける足音が聞こえる


「尚ちゃんっ!!」

少し怒ったような 大きな声


自分の教室に入り掛けた私は
足を止めて 振り返った


ムッとした顔の悠太が 私の後ろに
立っていた



「誰 何 話してたの」

怒った声で 悠太は 私に言った


「知らない人 好きな人いるって
私 ちゃんと言ったよ 」


「知らない人が なんで 尚ちゃんに
好きな人いるかなんて聞くんだよ」


悠太は
私を怒鳴って 私の横の
教室のドアを思いきり殴った



そんな 怖い 悠太 初めて見た



なぜ 私を責めるの

なぜ そんな風に怒るの

私は

悠太との約束 ちゃんと守ってる



「なら 学校で 避けないでよ 」


私は初めて 悠太に言い返した



そして 涙が 止まらなかった

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