ひだまりの花
ひまわり堂
それから数日後。私は時計を気にしながら仕事をしていた。

今日はこの間のお礼を兼ねてひまわり堂に予約を入れた日だった。
一応余裕を見て6時に予約を入れたのだが、すでに時計は5時50分を過ぎている。

「これでよしっと。」

ギリギリだが何とか間に合いそう。
慌てて片付けをして、オフィスを後にした。

エレベーターの鏡で身だしなみをチェックする。
変なとこはないよね?うん。大丈夫。

一階に降り、ひまわり堂の入口に立つ。軽く呼吸を整えて、ドアをあけた。

「こんばんわー。」

そっと中を覗くと雅巳さんがデスクで書き物をしている。

「いらっしゃい。由香ちゃん、待ってたよ。」

顔をあげ、この間と同じ優しい微笑みで迎えてくれた。
立ち上がって迎えてくれる雅巳さんに紙袋を差し出す。

「あの、これ、この間お世話になったお礼です。良かったら…。」

今日の為に買ってきたのは私のお気に入りの洋菓子店のクッキー。

「気を使ってくれなくて大丈夫だったのに。でもありがと。」

紙袋を受け取って、雅巳さんが笑う。
接客業なだけあって、笑顔が多い。


 先日と同じソファで問診票を記入して、マッサージのコースと料金の説明を受ける。

「今日は初めてだし、基本のコースでいい?疲れてる時とか、もう少し長めのコースもあるけど。」

「はい。大丈夫です。」

ベッドに横になってマッサージをしてもらう。
暖かい手にゆっくり揉みほぐされ、しばし至福の時間を味わう。

こんな時間も必要だったんだな~なんてぼんやりと考える。

 マッサージが終わると、この前と同じお茶を出してくれた。私が持ってきたクッキーも添えて。

「マッサージの後は水分もたくさんとった方がいいんだよ。」

「ありがとうございます、このお茶、美味しいですよね。」

ゆっくりお茶を飲むと体にじんわり染み込んでいく。
この感じもなんだかすごく心地良い。

素敵な時間を過ごして、店を後にすると体だけでなく心も軽くなっているような気がした。

この日をきっかけに、私は一ヶ月に一度ひまわり堂でマッサージを受けるようになった。
 
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