愛情の鎖

「なによー」と、むくれた唯さんがコウさんの肩に軽くパンチを落とす。

それを鼻で笑って受け止めるコウさん。


ああ、仲いいんだな、この2人。

きっと、これはただの同僚とかの関係じゃなさそうな気がする。

私の勘が間違ってなかったら、二人の間にはもっと親密な何かがあるんじゃないのかな?


「あ、そうだ。晃一も何か飲む?」

「ああ、じゃあ、コーヒーを……」


二人の距離が近い。

初めて見るコウさんの打ち解けた笑顔。

そんな風に話さないで、ほしい。

その笑顔を私にも向けてほしい。

私にも優しく語りかけてほしい。

そう思った時、私の中で核心的な何かがパチンと音を立てて弾け飛んだ。



「……梨央、ちゃん?」


急に呼ばれて、沈んだ顔をハッと元に戻す。


「どうしたの?また気分でも悪くなった?」


心配そうに覗きこまれ、私は慌てて顔を横に振った。

笑顔、作らなきゃ。

私らしいいつもの笑顔を…


「あの、今何時ですか?」

「え、今?えっと夕方の17時30だけど」


もうそんな時間!?

私は慌ててベッドから降り、壁際に置かれていた自分のバッグに手を伸ばす。中から携帯電話を取り出すと、急いでロックを外し通常画面に切り替えた。

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