妄想世界に屁理屈を。


「呪われた従者は主のために最善な状況で迎えてやりたい――そう思った彼は、この世界に必要なものを…そう、戸籍を用意した

それも完璧主義な彼に相応しい、矛盾の欠片もない戸籍をね」


この世に生きるのには必要不可欠だもんな。

…どうやってやったとかは聞かないで置こう、こんがらがりそう。

しっかし、本当にミサキくんは偉い。

ちゃんと主のためを思ってる。


「もちろんそんなこと知らない黒庵は、現世の記憶…まあこの世の常識だけを送られ、他は消えたまま復活した。そのときに由美に拾われた。

そこからさ、問題は」


ね?と鸞さんに確認をとるように首を傾げ、「うがああっ」と鸞さんが悶え死ぬ。

…その漫才いいから、早く…


「…当然、突如現れた謎のイケメンを彼女は必死に調べた。それこそ警察とかにも協力を求めて、彼を家族に帰そうとしたんだ。

で、当たったのがミサキくんの用意した戸籍ってわけー」


山本の姓が、当たったのだ。

そのせいで彼の身元は証明されてしまい、彼が“人間でない生き物”の可能性は途絶えた。

彼が人間であることを信じて疑わなくなってしまったわけである。


当然――黒庵さんもそれを信じ。

“突如現れたイケメンを拾った普通のOL”という、少女漫画チックな設定が生まれてしまったのだ。
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