妄想世界に屁理屈を。

人間の恋と神様の恋

◇◇◇




「…ん」

ぼんやりと豆電球に照らされた部屋に、百瀬の声が響く。


もぞもぞと起き上がる音に、後ろを振り向いた。



「起きた?百瀬」


「あ…ゆ、」

そう言って口元を押さえ、気まずそうにそっぽを向いた。


「柚邑でいいよ」

「…うん。柚邑くん」


そうだよな、なんて呼べばいいのかわからないよな。


「…ここは?」


「俺の部屋だよ」


百瀬は初めてである。

あれから、眠ったまんまの百瀬をここに連れてきたのだ。


…さすがに百瀬を驪さんちとかに連れてくわけにはいかないから。


「どこまで覚えてる?」

「ああ…邪鬼(ヤキ)ちゃんって子と喋りながら塾から帰ってたら、いきなり目の前邪鬼ちゃんが学校の方へ走って…

追いかけようとしたら甘い匂いがして…それで…

あれ?そこから記憶がないなぁ」


おそらく邪鬼ってのは天探女だろう。

彼女から聞いた話と合わせると、彼女は最初に迷子を装って百瀬と接近一一そこから同じ塾に通ってるという設定で親交を深めたらしい。

今日もその塾から一緒に帰っていたら、つけている荼枳尼天を見つけ、いそいそと殺りにいき、その背後の白狐さんが百瀬を術的なもので眠らせた。


ちなみに邪鬼っていうのは天探女の別名天邪鬼からとったのだろう。

彼女、よくわかんないけど天邪鬼とも呼ばれているらしいから。


…それっぽい性格だよなぁ。




「そこから百瀬は眠って、で、ここに連れてきたってわけ」


「えと、なんで…ど、どうして柚邑くんが」


黒庵さんたちの流れを知らない百瀬は当然の疑問を口にした。
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