妄想世界に屁理屈を。
あれから。


俺は毎夜毎夜女の子にならなくなり、メイド服のメイちゃんの噂もなくなっていった。

俺の家族だけは彼女の存在をずっと疑ってたけど、めちゃくちゃ否定しまくって、最後の最後には納得した。


百瀬にはまだ告白できていない。勇気が足りないのだ。




たった1週間にも満たない神様との生活だったけど、神様を見る目が変わった。


こちらが勝手に祈って産んだ神様。その始末は、ちゃんと人間がしないといけない。


祈ることはどれだけの行為なのか、きちんと理解した上で祈り、乞うことが大事だ。


その願いをぶつける相手、神様には、きちんと感情があり心があるのだから。



「柚邑〜」



部屋で勉強していると、雀の姿のスズがコツコツと窓を叩いてきた。


ガラガラと開けると、なかにあたりまえのようにはいり、人間体になる。


「これからばーべきゅー?ってやつやるんだって。柚邑も呼んであげてもいいんだけど、来る?」


スズの髪の毛は元通りポニーテールだ。

アカネの霊力を戻した時に戻ったらしい。


「バーベキューって肉焼くんだぞ。お前大丈夫か?」


「鶏肉じゃないなら平気!」


はやくおいではやくおいでといいがちに手を引っ張ってくる。




あれから、俺は神様の勉強を始めた。



考古学から入り、どうしてこんなことになったのか、人間はどう考えてるのかが知りたくて。

中国神話の本を閉じ、スズはまた雀の姿になって肩にのる。


「かあさーーん、俺ちょっと出かけてくる」

「いってら〜」


心底興味無さそうにお煎餅をかじりながら返された。



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