召しませヒメの甘い蜜
◇花嫁修業


「麗には、生まれた時から許婚がいるの」


母からそう告げられたのは、デザートの洋ナシのソルベを食べている時だった。


「山上グループの山上総一郎さん」


山上グループと言えば、世界的規模で事業展開しているホテルグループだ。

明治創業の旅館から身を起こし、国内で細々とリゾートホテルを展開している我が姫野グループにとっては雲の上の存在だ。


「なんでそんな凄い方がわたしの許婚なの?」


それはまさに、麗の心の底から出た素朴な疑問だった。


「亡くなったお爺様と山上総一郎さんが古くからの知り合いだったの。

とても仲が良ろしかったんですって。

いつか二人に子供ができて、それが男と女だったら結婚させよう。

そんな約束をされてたみたいなの。

生憎、姫野家には貴方のお父様しか生まれなくて。あちらの山上家にもご子息が一人だけ」


「それで、その約束が孫の代まで引き継がれたってこと?」


「ご名答」


にっこり微笑んで頷く母が鬼に見えた。
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