この空の下で
トイレの神様
 入学式のあの日、僕の両親は泣いていた。泣いている父母はあまりいなかったというのに。そういえば、幼稚園の卒園式の日も泣いていた。なぜだろう。よっぽど二人は泣き虫なのだろう。そう思うことで僕は納得していた。

 学校は楽しいところだ。いろいろなことを覚えることができるし、友達もたくさん作れる。だから学校は大好きだ。深雪はというと、元気すぎて、先生や父さん、母さんの手を焼かしている。

 家に帰れば、優しい母さんがいつも笑顔で迎えてくれる。しかし僕はすぐに外へ遊びに出て行っていく。友達と遊ぶのは楽しいが、友達の都合もある。そんな日は深雪と家で遊ぶか、家でのんびりしている。

 そして夜はというと、夕飯を食べ、お風呂に入り、居間でテレビを見る。そして風呂上りはいつも、深雪に言われることがある。もう、いつもクッションで頭を拭かないでって言ってるでしょ、と。これは幼稚園を卒園する少し前からやり始めていた。本当に気付かないでやっているので、自分でも参っていた。父さんはその僕らのやり取りを見て、いつも笑っていた。僕はそれを見て、安心しているから続けているのかなぁ、と思っている。そして家族団らんでテレビを見て、笑うところは家族全員で笑い、沈黙しなければいけないところはきちんと黙る。就寝時刻に近づくと、僕らは強制的に寝かされる。どんなに面白いテレビでも。寝る前に、僕と深雪は眠そうな目で歯を磨き、時々、深雪は歯を磨きながら寝ることもあった。頭がこくんとなると、その前兆である。そして歯を磨き終わると、僕らは各々の部屋へ向かった。僕らは小学校に進学してから部屋が分かれた。その前はよく二人で、その日起こった話やしりとりをしたものだった。先にどちらかが寝ると、少し寂しくなるのであった。なので部屋が分かれると、毎日が寂しくなる思いであった。

 僕は寝る前に必ずトイレへ行く。なぜかというと、夜中にトイレへ行くのを防ぐためである。なぜ防ぐのかというと、少し恥ずかしいが、怖いからである。それは昔まではいかないが、幼稚園の年少の頃に聞かされた、父さんの話が原因であった。
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