君ともう一度~入れ替わってから知った気持ち~

「あっ、中本。終わった?」

「う、うん…。さっき解散した」

「そっか。お疲れ様」

「ありがと…」


学校から少しだけ離れた場所にある、小さいベンチに座った桜木と私。

もう辺りは真っ暗だ。


「あの、その…」

「そんなに気を使わなくても、大丈夫だよ。…後悔はないし」

「うん。後悔ないのが一番だよな。…でも、我慢すんなよ?」

「…うん…」

「そりゃ、あんなに頑張ってたんだから、悔しいよな。だから、泣きたかったら泣けばいいよ」

「……っ…」


桜木は、なんでこんなに優しいんだろう。

結果が銀賞で、真っ赤になった目をみれば、困ってしまうはず。

でも桜木は、私が我慢してることに気付いて、言葉を選んで慰めてくれた。

同情とか励ましじゃなく、同じ目線になって。
そんな優しさが一番嬉しい。


「も、大丈、夫。桜木、ありが、と」

「どういたしまして。っていうか中本、全然大丈夫じゃないだろー(笑)気が済むまで泣けばいいよ」

「…っ…な、んでっ、気、付く、のー…」

「ははっ。俺は、中本をよく見てるから、わかっちゃうんだよなー(笑)」


結局私は、泣き止んではまた泣いて、の繰り返しで、遅くまで桜木に一緒にいてもらった。


帰りは桜木に家まで送ってもらって、桜木は私のお母さんが車で送っていった。


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