扉

ババァの目が見たこともない位寂しそうだった。
…しかし、いつものババァとは同一人物とは思えない程綺麗だ…
ババァは父親に向き直ると、
「私は誰にも誘拐なんてされていません。自分の意思でこの家を出ていき、あそこのアパートで管理人を始めました。この家に戻る気はありません。」
母親はフゥ～と深い溜め息をつき、父親は高い笑い声をあげた。
「何の不満がある？？何一つ不自由なく暮らしていただろう。あんな汚いアパートに住んでいる事が世間に知れたら恥なんだよっ！」父親の言葉に、母親も相づちを打ってババァを説得しようとする。ババァは何も言わずに、部屋の隅を睨みながらうつ向いていた。