こちら元町診療所
でも、お母さんには正直驚いたけど会えて良かった


私には両親がいないから、何だかこんなに明るい二人を見ていたら羨ましくなったのだ



「聖治さん」


『ん?疲れただろ』


「ううん、今日はありがとうございました。聖治さん全然緊張してなくて私ばっかりあたふたしてごめんなさい」


人生で何度もあることじゃないからこそ緊張するのは仕方ない


大好きな人の家族だから余計にちゃんと認めてもらいたかった



『お姉さんに靖子を下さいって言ったとき手が震えてたけどね』


「えっ!!?」



『俺だって生身の人間だから緊張するさ。靖子の家族に認めてもらえなかったらって考えてたから』



……聖治さん



なんだ、お互い一緒の気持ちだったんだ


まだ何も始まってはないけれど、聖治さんと二人でこれからたくさんのハードルも越えていきたいと思った



『靖子』


「………」


『お疲れ様……』



暖かい車内で彼の声が聞こえた気がした


そう、この世で一番安心する声





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