こちら元町診療所
今年一番に念を込めて祈った願いは、あっさりと打ち砕け私は作業台に突っ伏した


『どういうことだよ?』


若干低い声が耳に届くも、今のところ再起不能


良さんって前も勝手に帰っちゃうし、もしかして空気読めない人?


笑うと可愛いのに今は悪魔の微笑みに見えてきた


『今日二人でずっと料理作ってたんだよね』


『は?ずっとってなんだよ!?』



どんどん低くなるその声に、何だかもうどうでもよくなってきた


こそっと走って逃げようかな。


『ささやかなって言ったじゃん。』


『手出すなよって言ったよな?』


『出してない………多分』


おい、そこは否定するとこでしょ?


静かな店内に二人のどうでもいい話が響いて、もうこのまま寝てやろうかとさえ思えてきた


『靖子ほんとにいるの?』


『うん。』


あぁ言っちゃったよ。


もうそのあとは何か言ってたけど、聞こえなくていらっとした私はミネラルウォーターを飲み干した。


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