ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
本当は朝シャンしたいところだけど、時間がなさそうだし、体がきついので洗顔だけにしておいた。もちろん、新藤さんが出してくれた赤い柄の歯ブラシで歯も磨いた。


オレンジジュースをいただき、寝室に戻ってお化粧をし終えたところに新藤さんが現れた。


「洋服なんだが、自分で選んでもらっていいかな?」

「あ、はい」

「じゃあ、行こう」


新藤さんに続いて寝室を出ると、彼は隣の部屋のドアを開いた。


「どうぞ」

「はい……」


その部屋は、一目で女性の部屋だとわかった。真っ白な壁に、窓には白いレースのカーテン。座り心地の良さそうなアイボリーのソファーに、アンティークかもしれない木製のどっしりとしたテーブル。

正面に大きな三面鏡があり、その横に……遺影があった。私と同い年ぐらいの若くて綺麗な女性が、こちらに向かって微笑んでいる写真だ。


「ここは亡くなった妻の部屋なんだ」


新藤さんがぼそりと言った。

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