ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
私が新藤さんの家にお泊まりした事を彼に悟られたのでは、と思ったのだけど、


「二次会での事、恭子さんに言わないでほしいんです」


そうではないらしく、私はホッと胸を撫で下ろした。


「二次会の事って?」

「主任が僕に、その……」

「ああ、アレね……」


制作チームの主任さんが川田君に迫り、泣き出した一件の事だと思う。


「恭子に言わないのは構わないけど、そんなに気にする事でもないでしょ? お酒の席の事だもの」

「それはそうですけど……」

「それとも、その後何かあったの?」

「え? な、ないですよ。何も……」


私も余計な質問をしちゃったと思うけど、川田君は否定しながらも目を泳がせていた。これはひょっとすると、ひょっとするのかもしれない。

でも、それを詮索する気はないし、事実がどうであれ、私は知らない方がいいと思う。恭子も。


「そうよね? ごめんね、変な事聞いちゃって。とにかく恭子には言わないから安心して?」

「ありがとうございます」


それで話は終わりらしく、川田君は立ち上がりかけたのだけど、


「あ、ちょっと待って?」


今度は私が彼を引き止めた。川田君にある事を聞いてみようと不意に思ったから。生きる意欲を失っていた恭子を、見事に立ち直らせた実績のある彼に……

< 66 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop