ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「じゃあ、おやすみなさい……」


私は、よろよろという感じでベッドから立ち上がった。とにかく早く一人になって、眠ってしまいたかった。


「あなた、どこへ行くの?」

「自分の部屋。なんだか眠くなっちゃった……」

「何言ってるの。あなたの部屋はここでしょ?」

「えっ?」


ああ、そうだった。ここは元々私の部屋だった。何やってんだろう、私……

私は母に手を引かれ、再びベッドの上にストンと腰を下ろした。


「元気を出しなさい?」


と母は言うけど、それは無理。それどころか、泣きたい気持ちで私は下を向いた。


「諦めるの? 新藤さんの事……」


と訊かれ、私は下を向いたまま、コクンと頷いた。やだ。本当に涙が出て来ちゃった……


「何よ……。あなたらしくもない」


はあ?

私は思わず顔を上げ、母の顔を見た。“あなたに言われたからでしょ!”という、抗議の気持ちを込めて。


「確かに難しい恋だと思うけど、頑張る前に諦めるなんて、莉那らしくないんじゃない?」

「だって、お母さんが言ったんじゃない。新藤さんには再婚する気がないって……」

「それは私の勝手な想像だって言ったでしょ?」

「ううん、きっとそうだと思う。だって、新藤さんってすごく真面目な人だし、奥様の話をした時、とても辛そうなお顔をしてたもの……」


とうとう涙が目から溢れ、私の頬を伝わって行った。そんな私に向かい、母は、


「だからどうだと言うの?」


と言い放った。まるで怒ってるみたいな強い口調で……

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