私がある日消えたなら
『お兄ちゃん殺したら面白そうじゃない?』
母、父、妹は言った。笑ってた。

母が言った。
『お兄ちゃんは悪いことをしたの。私達家族に暴力を振るうのよ。悪いことよね。だからこれ以上悪いことが起こらないようにあの人を殺すのよ。』
優しく語りかけるように柔らかい声で。

父が言った。
『俊は悪いやつでなー。俺たち相手に暴力を振ってきたもんだからなー。
殺しちまえば生活がどれほどよくなるものか…。』
父がお酒を飲みながら何気なく言った。

妹は覚えていない。

後で知ったことだが兄はよく家族に暴力を振っていたようだった。
家族に不満を抱いていたからだそう。
私は兄に可愛がられていたから暴力を振っていたなんてこないだ初めて知った。

殺したくなんてない。けどある日妹に呼び出されて兄の部屋へ行った。
兄は寝ていた。最近引きこもりがちで部屋から出てくることはめったになかった。そこには両親の姿があった。
『おまえ今だ。殺せ!!!!!』
小さな声で言うがはっきりと聞き取れた。
『そんな…。無理に決まってるじゃん。本気?』
『本気よ。はやくしないと目をさましてしまうから急いで!』
家族は全員とても冷静だった。
私だけなのか、こんなに汗だくなのは。
『はやくしろ!』
父が怒鳴る。祖の瞬間兄が目をさましてしまった。
私はどうしていいかわからず兄を包丁で刺した。
はやく死ぬように何回も何回も同じ場所を刺した。
兄はうめき声をあげて息を引き取った。
自分の手は、血だらけになり辺り一面に血が飛び散っていた。
私はしばらく放心状態だった。何をしていいかわからなかった。
そのあいだに家族は兄の部屋を出た。

それからというもの私は王さま扱いされた。
理由は、兄を殺してくれたから。ありがとうとたくさん言われた。
けど、ちっとも嬉しくない。
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