二人は甘い初恋関係

「律矢!」


教室に着くと、残っていたのは…佳織ひとりだけ。


俺の姿を見るなり、何やら怒った様子でこちらに駆け寄って来た。


「もう、一体どこに行ってたのよ!携帯に電話しても全然出ないし!」


「千景がケガして保健室に付き合えって言うから行ってたんだよ。携帯はバッグの中に入れっぱなしだから…。」


自分の席の上に置いてあるバッグを指差すと、佳織から溜め息が零れる。


「それじゃあ、携帯の意味ないでしょ…。」


「さっきから何を怒ってんだよ。それに、お前…教室に一人で残って何してたわけ?」


全く状況が把握出来ない俺。


質問すると、佳織は俺の目の前に素早く何かを差し出す。


それは、日誌だった。

 
「私は…日直の小春川さんの代わりに、これを書いてたの…。」


「は?」


「小春川さん、体調悪いみたいでさ…。ちょっと熱もありそうな感じだったから、先に帰ってもらったんだ…。早く休んだ方がいいと思って…。」


「えっ…」


思わぬ言葉に目を見開いた。


< 269 / 322 >

この作品をシェア

pagetop