鬼部長の優しい手



外した視線の先は七瀬の手元。




ん?七瀬の…手に握られてるのは
なんだ?


じっと、七瀬の手元を見ていると
七瀬の手に、なにかが握られていると
認識する。




「七瀬…、その手のやつ、なんだ?」

「え、あ、いや…これは…」



俺の言葉に慌てて手元の”それ“を隠す
七瀬。


ちらっと見えたのは、紙…か?
書斎にあったやつか?



「見せなさい」


俺は少し目を細め怒った顔を”作る“
その顔のまま七瀬の背中に隠れる
紙らしきものを、奪った。




「あ…っ」


「これは…」




それは今朝、会社に出勤する前まで
見ていた資料。

先日、“緑に囲まれた小さな式場で
結婚式を挙げたい”と依頼してきた
カップルのために、うちのブライダル施設の系列からいくつか調べて
候補を上げておいたの資料。




七瀬はこれを…見たのか?





「ぶ、部長…?」


「ちょっと、今こっち見ないでくれ」




また、顔に熱が集中する。


恥っ…



努力してるって思われたよな…?
いや、いいことなんだろうが、
人に…がんばってる所を
いざ見られると

やっぱり、恥ずかしい…




俺は赤いであろう顔を手で隠す。




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